
厳しい海気象状況でもDPSを駆使し定点保持させる
■ 職場(本船)の紹介
「ちきゅう」は掘削地点に定点保持するDPS:Dynamic Positioning System(自動位置保持装置)、360度旋回可能な6基のアジマススラスター、大水深の海底下を深部まで掘り進むことが可能なライザー掘削技術を備えた海洋研究開発機構の誇る地球深部探査船です。全長210m、幅38mにも及ぶ巨大な船体、中央にそびえ立つ天を摩する掘削櫓は見る者を圧倒します。「ちきゅう」が掲げる壮大なミッションは巨大地震発生メカニズムの解明、地下生命圏解明、海底資源探査、そして、全人未踏であるマントルへの到達等様々にあり、海底を掘り進んで地球の未知に挑戦しています。
■現在の業務

地球深部探査船「ちきゅう」に航海士兼DPO:Dynamic Positioning Operatorとして乗船し、DPSの運用及び関連機器の保守管理、航海当直、航海計器の保守管理を行っています。掘削作業は掘る地点を定めたら数千メートルのドリルパイプを海底下に繋いだ状態での長期間の作業となります。
この間、船を海上の一点に留め、定点保持することが我々の役目です。DPOは船橋でDPSを監視し、船の位置や船首方位、風や潮流、波などの外力、発電機やアジマススラスターなどの動作状況の変化に注意を払いながら船体動揺が極力発生しないように努めます。また、定点保持を行うには正確な位置情報が必要となりますが、「ちきゅう」には人工衛星を使ったDGPS:Differential GPSの他に海底に設置した音響ビーコンを使って音響測位するAPRS:Acoustic Positioning Reference Systemといった原理の異なる測位装置が搭載されています。これらの機器の保守管理、運用も担当職務となります。
■仕事する上で大切にしていること

商船の場合は船を走らせ、荷物を運ぶことが仕事ですが、本船の場合はいかに船を安定させて定点保持するかが重要になります。掘削作業中はドリルパイプが海底に繋がっているため、自由に動くことができません。オペレーションによっては黒潮ど真ん中の強潮流、寒冷前線、台風などの自然現象、機器のトラブルに遭遇することもあり、一歩操作や判断を間違えると船が流されて大事故につながる可能性もあります。そのような極めて厳しい状況を各部署と協力して無事に乗り越えた時の達成感は計り知れないものがあります。また無事にオペレーションを終えて下船した時の解放感と安堵感は何回味わっても飽きることはありません。