掘削技術を持ち帰れ。(その1)

  (独)海洋研究開発機構(JAMSTEC)が建造した地球深部探査船「ちきゅう」。 (株)グローバル オーシャン ディベロップメント(GODI)は運航関連業務をはじめ、 さまざまな形で本船に協力しています。人類未踏の地球深部への掘削を実現する高度な技術を学ぶため、 米国で研修中の松尾 豪貴さんの日々を紹介します。
松尾 豪貴(まつお こうき)
2001年NYK入社。
機関士としてコンテナ船、LNG船に乗船。
07年4月からGODIに出向

いざ、テキサス
   私は「ちきゅう」に掘削部要員として乗船するために、5月末からテキサス州ヒューストン (米国)で掘削技術の講義を受けてい ます。ヒューストンは世界の石油ビジネ スの中心地の1つで、Halliburton社やSchlumberger社といった世界屈指の石油 開発・生産関連企業が密集しています。今回の研修では、最初にこうした 会 社を訪 問して掘削に関する説明を聞き、掘削装置の製造過程などを見学しました。その後、 掘削理論を学ぶのですが、地質学、流体力学、化学などを組み合わせた複雑かつ 非常に奥の深い技術が必要だと実感して います。





泥水が鍵
   陸でも海でも掘削孔(こう) を掘る原理は基本的に同じです。必要な物は掘削用の刃が 装備されたドリルビット、それをつって回転を伝えるドリル パイプ、そして泥水です。この泥水は海水、清水、油のいずれかを ベースに、弱アルカリ性の粘土岩ベントナイトや重晶石バライトなどを加えて粘度や比重を調整した液体で、これ無しには掘削孔を掘ることができないのです。ちなみに掘削とは、ドリルパイプの下端に装着したドリルカラーと呼ばれる肉厚で重いパイプの自重を加えながら、ドリルビットを 回 転させて 地 盤を削り、その削りくずを泥水で地上に運搬する作業を繰り返すことです。 聞きなれない泥水について、もう少し 説明しましょう。

   掘 削 中にドリル パイプ 内を通過し、掘削孔の内側を巡って、削った地盤を地上へ運ぶ泥水は、人間の血液と似ているかもしれません。泥水には削られた地盤の運搬のほかにも、ドリルビットの冷却や潤滑、掘削孔が崩壊しないように保護 壁を作ると同時に、地層圧に打ち勝つ圧力を与えるという大切な役割があります。
   常に注意しなければならないのは、泥水の比重と粘度のバランスです。これが崩れ ると、掘削孔の崩壊や原油、ガスの噴出事故などを引き起こす原因にもなります。そのため、この泥水を調合するマッドエンジニア (Mud Engineer)は定期的に分析を行いな がら、掘 削 する地質に合った泥水を最適な状態に保ち続けているのです。この道 年のマッドエンジニアが「泥水の調合は奥が深く、いまだに勉強の日々だ」と言ったせりふが、この技術の深遠さを物語っています。


↑泥水分析研修

↑泥水を供給するマッドポンプ

↑ドリルビット

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