観測士官について(その2)

今度のクルーズではウッズホール海洋研究所の研究者や観測技術員たちと一緒に大深度係留系を設置されたということですが、初めてのことも多かったとと思います、紹介していただけますか?

 その係留系はアメリカのウッズホール海洋研究所が開発したもので、海洋研究開発機構むつ研究所が購入して設置しました。時系列鉛直分布自動計測係留系と呼ばれています。

海面下40mから4,540mまで自動昇降しながら、水温・塩分・流向流速を測定できるものです。

今回設置した係留系はブイが海面になくて、海面下35mに設置しなければいけませんでした。そのために、投入場所の水深調査にはシービームはもちろんのこと、事前にCTDのデータから海水密度を計算し正確な水深(アルチメトリー)を出してから係留系の長さの調整をして投入しました。

 それから、係留系にはリリーサー(切り離し装置)というのが海底側に付いています。係留系を回収するときに、音響のコマンドで切り離して浮上させるためです。通常は2個直列につないで確実性を高めています。当然下側を切り離しますが、場合によっては上側を切り離すこともあるわけです。そうすると下側のリリーサーは捨ててしまうことになります。今回のリリーサーは並列になっていました。輪にしたワイヤーをシャックルに通して(その海底側はシンカーに繋がっています)両端をそれぞれリリーサーに留めています。そうするとどちらかが作動すれば、ワイヤーが外れますので、高価なリリーサーを海底に残してこなくてもよくなります。 いよいよ最後にシンカーの投入となりますが、投入地点まで引っ張っていきます。残りのリリーサーとシンカーだけを船上に残した状態で1〜1.5時間も引っ張りました。従来は5〜10分でした。十分に時間をかけてワイヤーの弛みを取るためです。またこのために引っ張る時間も考慮してアプローチ距離を決めていました。

設置方法については、今まで「みらい」で確立された設置手順とは異なる部分がありましたので、事前に十分な打ち合わせを行いました。

 ウッズホール海洋研究所からは5名乗船されましたが、研究者が2名と、技術員が2名と補助員が1名です。彼らと一緒に設置作業を行いました。 係留系はもちろんのこと、補助設備である工具、クリート、エアーウィンチ、巻き取りウィンチなど一式をアメリカ側で積み込みました。これらの装備を使って、係留系設置日までの間に、船上でのワイヤーの巻き直しや各測器の事前準備などを一緒になって行い、係留系の全体像や設置手順などをお互いに確認することができました。

 「みらい」では船尾のAフレームを使い、船尾中央から投入するのが常でしたが、最初の浮体だけは多関節クレーンを使って右舷船尾から投入しました。それから係留作業時の船のスピードとワイヤーの繰り出し速度も従来の方法と大分違っていました。これまでは途中で測器やガラス玉を取り付けるときには船速を落としたり、ワイヤーを長く繰り出す時には船速を3〜4ノットまで上げることもありましたが、今回は船速は常に一定の1.5ノットで航走し、それでワイヤーの繰り出し速度もほぼ一定に保ちました。

「みらい」ではワイヤーを1,000m繰り出すのに約10分かけていましたが、今回は20分以上かけて、安全にしっかりと繰り出しました。

そういう訳で、全体の所要時間も6〜7時間と「みらい」の倍以上の時間がかかりました。今までは所要時間を短縮しようとして、少しでも無駄を省き、早く早くやろうとしがちのところがあったと思います。船速を速くしたり遅くしたり変えますと、引っ張られているワイヤーが弛んだりしますから、キンクが入ったりして係留中にワイヤーが切れてしまう危険性がありました。彼らのやり方は、一つの係留系を一日かけてじっくりと安全に確実に入れようという考えでした。係留系の構成によりその投設置方法はいろいろなやり方があると思いますが、今回の様な方法は勉強になりました。

今回、ウッズホール海洋研究所の方々と共に係留系作業を行い、我々「みらい」の作業手順と違うところがありましたが、見習うべきところもたくさんあり、この貴重な経験を大切にして、ウッズホール海洋研究所の技術を積極的に取り入れていきたいと思います。

有難うございました。今回のクルーズでは新しい試みに挑戦されて大変だったと思いますが、たくさん勉強することができたことは羨ましい限りです。今後とも「みらい」が世界最高の調査研究活動ができるようご活躍ください。



関連リンク: Woods Hole Oceanographic Institution

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